映画『マリの話』公式サイト

映画『マリの話』公式サイト 成田結美 ピエール瀧 松田弘子 戎哲史 パスカル・ヴォリマーチ、デルフィーヌ・ラニエル 監督・脚本・プロデューサー・編集=高野徹 共同脚本=丸山昇平 撮影=オロール・トゥーロン 録音・整音=松野泉 照明=北川喜雄 助監督=大美賀均、原田真志、三浦博之 ダンス監修=鈴木竜(DaBY) スタイリスト=雪尚人 衣裳提供=DAMMIT TOKYO 通訳=井上麻由美 音楽=橋本三四郎 製作・配給=ドゥヴィネット 配給協力・宣伝=ブライトホース・フィルム 文化庁「ARTS for the future! 2」 補助対象事業  2023年製作/60分/ヨーロピアンビスタ/DCP|偶然の出会いとあまりに唐突な別れ。愛、そして映画についての四章の組曲。

スランプ中の映画監督。夢の中で出会った女性。逃げた猫はどこに行った?そして映画は――完成したの?

2023年12月8日(金) シモキタ - エキマエ - シネマ「K2」にて公開!

ひたすら逸脱を繰り広げる映画『マリの話』が決して踏み外さない一点は「面白い」ということだ。そもそも面白い映画は極めてまれなものだけれど、この映画が更に特異なのは「何がどうして面白いのかまったくよくつかめない」ということだ。

四話構成の第一話こそ、果たしてここまで同時代の他の映画作家に似ていてよいのか……と面食らうが(それにしたって上手いと舌を巻きもする)、話が進むにつれて映画はまったく思いがけないものへと変貌していく。映画の終わる頃には、観客は高野徹という一人の映画作家の誕生に立ち会うことになる。面白い。しかし、この得体の知れなさは何だか恐ろしくもある。

——— 濱口竜介(映画監督)

イントロダクション&ストーリー
Introduction & Story

本作は、濱口竜介監督『ハッピーアワー』(15)、『偶然と想像』(21)の助監督を務め、ひと夏の恋愛を描いた短編映画『二十代の夏』(17)がフランス・ベルフォール国際映画祭でグランプリ&観客賞を受賞するなど、世界的に注目されつつある監督・高野徹、待望の初長編作だ。
マリ役を演じたのは、フランスで俳優としてのキャリアをスタートし、仏リメイク版『キャメラを止めるな!』(22)で個性的な通訳の女性を演じるなど、大ブレイク中の注目女優・成田結美。本当は現実に存在しないのでは? と観るものに思わせる美しくも謎めいた魅力を放つマリという女性を見事に演じた。
そして、スランプ中の映画監督・杉田役を演じたのは、Netflix「サンクチュアリ -聖域-」(23)や、映画『福田村事件』(23)など話題作への出演が絶えない、電気グルーヴのピエール瀧。映画『凶悪』(13)や『アウトレイジ 最終章』(17)で見せたアウトローな役柄のイメージをがらりと一新。恋と映画づくりに奔走する情熱的な映画監督という役どころを堂々と演じた。
マリとユーモラスな恋バナを繰り広げる女性・フミコ役には、青年団で活躍する女優の松田弘子が出演。猫のように自由奔放で掴みどころのないフミコというキャラクターを、そのまま彼女の魅力として演じ、本作により一層の深みをもたらした。

冬がはじまったばかりの海辺の町。シナリオ執筆中の映画監督・杉田(ピエール瀧)は、偶然出会ったマリ(成田結美)という若い女性に心奪われ、映画に出演してほしいと声をかける。その情熱的で、にくめない杉田のキャラクターに、戸惑いながらも恋心を抱くマリ。ふたりは急接近するが……。

キャスト
Cast

  • 成田結美<マリ 役>写真

    プロフィール

    マリ 役

    成田結美

    成田結美<マリ 役>写真

    マリ 役

    成田結美

    大学卒業後渡仏し、パリの演劇スクールにて計4年間演劇を学ぶ。主役リリ役を演じた『My Little China Girl』(2019年/サム・アズリ監督)でデビュー。2019年よりフランス大手芸能事務所AS Talents Agencyとエージェント契約を交わす。現在はフランスを拠点に、女優として多数の映画、TV、舞台に出演。主な出演作品に、映画『天国にちがいない』(2019年/エリア・スレイマン監督)、準主役を演じた映画『Tokyo Shaking』(2021年/オリヴィエ・ペイヨン監督)、映画『キャメラを止めるな!』(2022年/ミシェル・アザナヴィシウス監督)などがある。その他、女優としての活動だけでなく、NHKBSプレミアム『フランス中継恋しいパリ』(2021年)、フジテレビ『新春!爆笑ヒットパレード2023』など日本のテレビ番組やCMにも出演している。

  • ピエール瀧<杉田監督 役>写真

    プロフィール

    杉田監督 役

    ピエール瀧

    ピエール瀧<杉田監督 役>写真

    杉田監督 役

    ピエール瀧

    1967年4月8日生まれ、静岡県出身。1989年に石野卓球らと結成した電気グルーヴでミュージシャンとして活躍する一方、1995年頃から俳優としてのキャリアをスタート。映画『凶悪』(白石和彌監督/2013年)の演技が評価され、第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞など、数々の賞を受賞。主な出演作品には、ドラマ『64(ロクヨン)』(2015年/NHK)、映画『怒り』(2016年/李相日監督)、映画『アウトレイジ 最終章』(2017年/北野武監督)、Netflixドラマ『全裸監督シリーズ』(19, 21/武正晴監督)、Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』(2023年/江口カン監督)などがある。

  • 松田弘子<フミコ 役>写真

    プロフィール

    フミコ 役

    松田弘子

    松田弘子<フミコ 役>写真

    フミコ 役

    松田弘子

    長野県出身。青年団(現代口語演劇)、あなざ事情団(観客参加型演劇)、コココーララボ(演劇のつくり方を考える場)に所属。『東京ノート』、『ヤルタ会談』(青年団)、『ゴド侍』(あなざ事情団)、『コココーラ』(コココーララボ)などの演劇作品に出演。映画の出演は、『ドライブ・マイ・カー』(2021年/濱口竜介監督)、『ほとりの朔子』(2013年/深田晃司監督)、『ヤルタ会談オンライン』(2020年/深田晃司監督)、『義父養父』(2023年/大美賀均監督)など。

  • 戎 哲史<藤原 役>写真

    プロフィール

    藤原 役

    戎 哲史

    戎 哲史<藤原 役>写真

    藤原 役

    戎 哲史

    1985年生まれ、栃木県出身。アメリカ留学経験後、2008年に円演劇研究所入所。2010年に演劇集団円会員昇格。主な出演作品に、舞台「景清」(2016年/森新太郎演出)、舞台「光射ス森」(2022年/内藤裕子演出)、映画『二十代の夏』(2017年/高野徹監督)、映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/山田洋次監督)などがある。

  • パスカル・ヴォリマーチ<ピエール 役>写真

    プロフィール

    ピエール 役

    パスカル・ヴォリマーチ

    パスカル・ヴォリマーチ<ピエール 役>写真

    ピエール 役

    パスカル・ヴォリマーチ

    フランス・アヴィニョン出身。「浪花少年探偵団」(2012年)、「ラスト・シンデレラ」(2013年)、「ショムニ」(2013年)など日本のテレビドラマで俳優としてのキャリアをスタートする。フランスの時代劇に傾倒する一方で、海外の作品、特に日本語の作品にも出演している。主な出演作品に、SF映画『最初のメデューサ(原題)』(2020年/セバスチャン・ペール監督)、映画『ジンガラと若者たち(原題)』(2022年/ジュリー・ デュクロク監督)、TVシリーズ「危険な関係(原題)」(2020年)、森茉莉の小説が原作の舞台「枯葉の寝床」(2023年、劇団セラフ)などがある。

  • デルフィーヌ・ラニエル<アンヌ 役>写真

    プロフィール

    アンヌ 役

    デルフィーヌ・ラニエル

    デルフィーヌ・ラニエル<アンヌ 役>写真

    アンヌ 役

    デルフィーヌ・ラニエル

    フランス・ノルマンディ地方出身。映画、テレビドラマ、舞台など幅広いジャンルで俳優として活動。主な出演作品に、映画『FOURMI(原題)』(2018年/ジュリアン・ラプノー監督)、主演を務めた映画『コミュニティ(原題)』(2021年/クレモン・ムーラン監督)などがある。

スタッフ
Staff

  • 監督・脚本・プロデューサー・編集高野 徹

    1988年生まれ。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修了。濱口竜介監督『ハッピーアワー』(2015年)、『偶然と想像』(2021年)などの映画に助監督として参加する。2017年に監督作『二十代の夏』を発表し、第32回ベルフォール国際映画祭(フランス)において日本映画として初めてグランプリ&観客賞のダブル受賞をする。2023年、はじめての長編映画『マリの話』を監督。

  • 共同脚本丸山昇平

    映画『HYSTERIC』(2000年/瀬々敬久監督)で俳優デビュー。文学座演劇研究所卒業後、舞台・映画・CMで活動。2017年に小説『赤ちゃんにさわらせて』を執筆し、第123回文學界新人賞の最終候補作となる。

  • 撮影監督オロール・トゥーロン

    パリ出身。フランスの国立映画学校ラ・フェミス撮影領域を卒業後、映画『彼女のいない部屋』(2021年/マチュー・アマルリック監督)などの撮影アシスタントを務め、現在は劇映画やドキュメンタリー映画、ビデオアートなど様々な作品の撮影監督として活動している。公開待機作に、ミゲル・デ・セルバンテスの小説を原作とした映画『犬の会話(原題)』(2023年/Norman Nedellec監督)がある。

  • 録音・整音松野 泉

    映画製作に携わりながら、ミュージシャン、フリーの録音技師として活動。監督作に『GHOST OF YESTERDAY』(2006年)、『さよならも出来ない』(2016年)など。録音技師としての参加作品に『ハッピーアワー』(2015年/濱口竜介監督)、『麻希のいる世界』(2022年/塩田明彦監督)など多数。 CD「星屑の国」発売中。 LP「あそぼ」リリース予定。

  • 照明北川喜雄

    東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了後、長編映画の撮影助手としてキャリアをはじめる。現在は撮影監督として、劇映画だけでなくドキュメンタリー映画、アート、ミュージックビデオ、コマーシャル、と幅広く活躍している。また近年はインターナショナルプロジェクトにも活動の幅を広げている。主な撮影監督作品に、映画『ハッピーアワー』(2015年/濱口竜介監督)、ドキュメンタリー映画『THE GREAT BASIN』(2021年/Chivas DeVinck監督)、映画『三度目の、正直』(2021年/野原位監督)、映画『悪は存在しない』(2023年/濱口竜介監督)など多数。

  • スタイリスト雪 尚人

    自身が営む、東京の古着屋/プロダクション "DAMMIT TOKYO" のディレクター。服屋のセルフプロデュースの経験を活かし、MVやブランドなどのディレクションや、写真・スタイリング、空間インスタレーションなど幅広く手掛ける。2022年に、自身のヨーロッパ買い付け旅の記録したフォトアートブック『1 Rue Erik Satie』を発表。

  • ダンス監修鈴木 竜

    振付家/ダンサー、DaBYアソシエイトコレオグラファー。ダンサーとしてアクラム・カーン、シディ・ラルビ・シェルカウイ、平山素子、近藤良平など国内外の作家による作品に多数出演。振付家としては、2014年に神楽坂セッションハウスよりセッションベスト賞を受賞したほか、横浜ダンスコレクション2017コンペティションⅠで「若手振付家のためのフランス大使館賞」などを史上初のトリプル受賞。鈴木竜×大巻伸嗣×evalaの3アーティストのコラボレーションによる 『Rain』(2023年)を愛知初演後、国内外ツアーを行う。欧州文化首都カウナス2022にて初めてヨーロッパのダンスカンパニーへの振付委嘱を受けたほか、インドで現地アーティストとの共同製作を行うなど、国内外から注目を浴びている。

  • 音楽橋本三四郎

    1986年生まれ。20代にフランス人歌手バルバラに心酔し渡仏。10年以上のパリ生活の中で独自のアーティストとしての地位を確立する。パリで歌とピアノの研鑽を積みながら、シンガーソングライターとして日本語/フランス語で歌っているほか、舞台俳優としても活躍している。歌手、ピアニストとしてパリのグラン・バレ、サント・シャペル、デジャゼ劇場に出演し現在に至る。

『マリの話』高野徹監督インタビュー(取材・文/吉野大地)

  • ──『マリの話』は4つのエピソードから成り立っています。この構成にされた理由を教えてください。

    この映画の出発点は、昨年パリで撮った3本の短編映画です。そのうち1本(森の短編と呼んでいます)はこれまでにない手ごたえを感じる仕上がりで、ただあとの2本がなかなかうまくいきませんでした。森の短編だけで独立した映画にする案も考えましたが、この1本だけで観客が楽しんでくれるだろうかという懸念があった。3本合わさることでお互いに状況や設定などを補完し合う設計にしていたからです。それなら、森の短編を楽しんでもらうための前日譚のような話を追加撮影して、それを繋げるのがいいんじゃないかと思い、現在の4章構成の映画にしようと考え始めました。

    ──夢の女性に恋するピエール瀧さん演じる杉田が映画監督である設定は、どこから生まれたのでしょう。

    森の短編を組み込んだ映画として構想したときに、ホン・サンス監督の作品から借りられるアイデアはないかと思って諸作を見直しました。今回もっとも参考になったのは『映画館の恋』(2005)でした。前半が映画内映画で、後半はそれを見た人たちの話ですね。そこから森の短編を映画内映画にするなら、登場人物は映画監督がいいだろうと思い浮かびました。瀧さんに脚本をお渡しすると、杉田の人物像を細かく考えてくださって、新しいキャラクターが生まれていきました。

    ──劇中の現実パートと非現実と思しきパートでは杉田のキャラクターがやや異なる印象を受けます。その差は演出されたのでしょうか。

    瀧さんからは脚本について幾つか質問を受けました。そのひとつが、杉田が女性を見つけて「マリさん」と声をかけるシーンで、「ここで名前を知っているのはおかしいんじゃない?」と。そこで「だから都合のよいことが次々と起きるんです」と状況設定を説明しました(笑)。そこから先は演出や説明することはなく、瀧さんがうまく演じ分けてくださいました。

    ──成田さんとはパリで出会われたそうですね。追加撮影したマリのキャラクターに関する具体的な相談はされましたか?

    成田さんの演技にも自分の想像を超える謎の部分がありますね。パリで撮った成田さんが出演する短編(本作の映画内映画)では、清純だったのが男性経験を経て転落してゆくキャラクターでした。それとはまったく異なる女性を日本で撮ることになって「驚かれるかな?」と思ったら、そういうこともなく、自然に受け入れてくださったように思います。

  • ──フミコ役の松田弘子さんも含めて、演出面で特に心がけたことや、それによって生まれた変化を教えてください。

    成田さんとはパリで撮影して、遠慮せずに話せる関係を結べていたため、あれこれとお互いに試してみることが出来ました。とりあえずやってみて失敗しても、成田さんなら許してくれる感覚があったので、いろいろと実験的なことが出来たと思います。
    瀧さんと松田さんに対しては、おふたりが演じるうえでいかに違和感をなくしてもらうか、そこを大事にしました。リハーサルで脚本の読み合わせをして、修正が必要なポイントをすり合わせる時間をもらいました。そこでの作業が最大の演出だったかもしれません。
    主におこなったのはセリフの微調整です。瀧さんは杉田の人物像を確立されていたので、「彼ならこう言わないでしょう」という提案や、俳優の立場からの意見をもらいました。不確かな脚本でしたが、杉田の筋の通った人物像が、観客をこの映画に迎え入れる拠り所となった気がしています。
    松田さんは俳優活動の一方で言語に関わることもやっておられて、翻訳者・歌人でもあられます。言葉に対してとても敏感な方です。脚本に書いていた女性のセリフ──いわゆる女性語──に対して修正のリクエストを多くもらいました。たとえば「あなた筋がいいわね」というセリフの「わね」といった女性語を、「あなた筋がいいね」に修正するなど、記号的な女性の言葉を排していくやり取りがありました。その作業によって、フミコというキャラクターがより「紋切り型」から離れられた感覚があります。
    また撮影時の松田さんは坐骨神経痛で、それでも出演してくださり、歩くシーンを撮る際は松葉杖が必要でした。劇中で特に説明もなく杖を使っているのは、そうした理由からです。杖を使う歩行がマリと出会うきっかけになり、脚本でもその部分を変えました。

    ──観客の想像力の度合いで、かなり印象が変わる映画だと思います。可変性が高いと言えそうな。

    試写を見て細馬宏通さんが書いてくださった作品評を読むと、独特の見方をされていて驚きました。
    僕のイメージでは、各章のあいだに──半年なのか1年なのかは明確ではありませんが──時間の隔たりを設けています。たとえば第1章と2章のあいだでマリと杉田が映画を撮ったこと、第2章と3章のあいだではふたりの関係に変化が生じたことが想像できます。そのように画やセリフの説明がなくても、無理のない範囲で各章のあいだを想像してもらえるように、と全体を設計しました。

    ──想像のための手掛かりもありますね。

    そこはかなり考えました。想像する材料になるものがないと観客は楽しめないし、どんな材料だとより楽しんでもらえるか、脚本づくりではそのことを重要視しました。

  • ──第2章をマリのフレームアウトで終えるのも見どころです。あのカメラワークはどのように決められたのでしょうか。

    第2章は元々脚本にはなく、撮影前日に急遽、撮ることを決めたエピソードです。現場で考える時間がなく、事前にカット割りを決めて撮影監督のオロール・トゥーロンさんと共有していました。ぼくはロケ場所のTCC試写室を訪ねたことがありましたが、彼女はロケハンをしていなかったのでほとんど準備なし、かつ短時間の撮影でもシーンを成立させてくれた。それは彼女の能力の高さを物語っていると思います。
    元々用意していたカット割りでは、斜めから撮った成田さんに最後にフレームアウトしてもらう予定でした。それが現場でいざ撮ってみると「この演技は正面から撮りたい」と強く思いました。というのも、僕は過去作で人物の感情が動く瞬間をあまり撮ってこなかった。でもあそこでマリが言葉を発する姿にはそういうものが宿っていると感じて、成田さんに「もう一度だけ正面から撮らせてください」とお願いしたんです。成田さんのおかげで今後、自分が撮るものに変化を強いるような、力強いものを撮ってしまった感覚があります。

    ──アクシデントを取り込んだり、いわば身近なものが創作源になっていますね。

    本当に多くのアクシデントがありました(笑)。その都度、状況に応える形で、撮影が可能になるよう脚本を変更したり、逆にアクシデントからアイデアをもらったり。そもそもパリで始めた短編に、追加撮影することで出発時の構想とまったく違う、自分でも想像していなかった映画が完成しました。時には行き当たりばったりに、身近なものや偶発的要素を採り入れていった結果、構成や設定が少し歪んでいる。でも、その感じが変で面白いなと作者としては思っています。
    今回の劇場での上映を通して、『マリの話』は何を達成したのか、観客の皆さんと一緒に発見できたらうれしいです。

    監督 ロングインタビュー(取材・文/吉野大地)は後日、
    神戸映画資料館ウェブサイトに掲載予定です。
    URL: https://kobe-eiga.net/special/

コメント
Comments

  • ひたすら逸脱を繰り広げる映画『マリの話』が決して踏み外さない一点は「面白い」ということだ。そもそも面白い映画は極めてまれなものだけれど、この映画が更に特異なのは「何がどうして面白いのかまったくよくつかめない」ということだ。
    四話構成の第一話こそ、果たしてここまで同時代の他の映画作家に似ていてよいのか……と面食らうが(それにしたって上手いと舌を巻きもする)、話が進むにつれて映画はまったく思いがけないものへと変貌していく。映画の終わる頃には、観客は高野徹という一人の映画作家の誕生に立ち会うことになる。面白い。しかし、この得体の知れなさは何だか恐ろしくもある。

    濱口竜介(映画監督)

  • 演技し、フリをし、共振しあう人間の身ぶりと声に宿る官能性。
    そのゆらめきをじーっと凝視して飽きることのない高野徹の目は、
    とてつもなく繊細でとてつもなくアブない。
    ルノワールやロメールら偉大な変態作家たちの真性なる末裔だ。

    三浦哲哉(映画批評・研究、青山学院大学教授)

  • 不思議な吸引力を持った4つのお話。
    その不思議さの一端を担う松田弘子さんの存在感に思わず心の中で拍手しました。
    松田さんと成田結美さんの寄り添う優しい時間を今でも不意に思い出す。
    ヒトは何にでも化けられるし俳優は自由だ。そんな幻想を信じさせてくれた瞬間だった。

    深田晃司(映画監督)

  • 高野さんの作風がとても好きです。それぞれの特異な関係性の中に生まれる「親密さ」と「情」を冷静に眺め、捉えて、揺さぶるような。
    不思議...。60分の映画、『マリの話』は終わらない。作品は、4章のエピソードで構成されているけれど、物語は永遠に続くことができる気がする。次のエピソードがぼんやりと頭に浮かんでる。
    「俳優として映画の中の役を考えること」と「映画の中で役として考えていること」の化学反応が起こり、皆さんの「頭の中で思考している」(様子)演技が素晴らしかった。

    小川あん(俳優)

  • マリとマリのまわりを取り巻く人たちとの距離感、四つのお話それぞれの距離感が、ずっと夢の中のようで、でも不思議な説得力があって、観終わったあと、次の日、一週間後と、何度も思い出す映画でした。不思議な映画体験をしました。
    日常の見過ごしてしまいそうなへんてこな出会いや発見の欠片を改めて大事にしたいなと思いました。

    中村桃子(画家・イラストレーター)

  • 『マリの話』を観ながらなぜか自然と涙が溢れていました。
    マリの心の葛藤、傷ついてもそれでも誰かを愛し続けたいと思うマリの姿。そんなマリを観て、とても切なくなり、でも思いがけない素敵な出会いに、また胸がほっこりと温かくなり・・・最後にはなんだか魔法にかけられたような気持ちになり、もう一度観たくなりました。
    この作品を通して、本当に誰かを愛するってどういうことなんだろう、と考えさせられました。そして女性として強く生き抜いていこうと、マリに背中を押してもらえたような気がします。

    本作を通して、皆さんにも少しでも元気を与えられたら嬉しいです。

    成田結美(本作出演)

  • この映画はいくつかのパートで構成されています。自分はそのうちのひとつを担当させていただいたので、実は全貌はわかっていないんです。でも、観客の皆さんの感じ方でいくつもの物語を紡ぎ出せる面白い作品だと脚本を読んで思いました。どうか楽しんで。

    ピエール瀧(本作出演)

  • 夢なのか、日常なのか、夢だとしてだれがだれの夢を見てるのか。『マリの話』を見ていると、いろいろなことがわからなくなります。でも、そのときどきに自由な見方をして良いのだと言われている気がします。出てくる人たちは、一つのことを言いながらどうも別のことを考えてるみたいだし、それが何なのかわかりません。わからないことをわからないまま味わったり、ああなのかこうなのかと思いをめぐらせたり、そういう豊かな時間を過ごさせてくれる作品だと思います。

    松田弘子(本作出演)

劇場情報
Theater

都道府県 劇場名 公開日
東京都 シモキタ - エキマエ - シネマ「K2」 2023/12/8(金)
福島県 Kuramoto 2024/4/3(水)
長野県 上田映劇 2024/2/16(金)
大阪府 シネ・ヌーヴォ 2024/3/9(土)
京都府 出町座 2024/3/8(金)
兵庫県 元町映画館 2024/3/9(土)
<クラウドファンディング支援者の皆様>アソシエイト・プロデューサー:成田 亨  軍司葉子  鈴木淳史|スペシャルサンクス:永田夏来  鈴木宣昭  タルマユウキ  後藤 剛  小畑克典  小山慶子  Hugh Kinsey  Yuna Kinsey  増倉 隆  Yeatman-Eiffel Yukiko  洸子  奥野 開  高橋永佳  杢之助  長坂友樹|「ご支援ありがとうございました!」